映画国宝の感想

映画『国宝』を映画館で観て来ました。大して映画にも歌舞伎にも詳しいわけではありませんが、素人なりの感想を書きたいと思います。温かい目でご覧になっていただけたら幸いです。少しネタバレしてます。

こちらの映画は、どんな映画だったか表現しようとすると、素晴らしいとか面白いとか楽しいではなくて、美しかったです。美しい映画でした。映像的にも。物語的にも。主人公の生き様も。

映画内では、出来事が善悪や正不正で分けられることが無く、ただ主人公がその出来事の中で美を求めていく感じがしました。この映画の主人公は、男性が女性を演じるという意味でも、歌舞伎における血統においても偽で、彼の娘さんの言葉に基づけば少なくとも善人だったわけではないという意味で悪ではあるものの、美をひたすら追求した果てに、真偽善悪を越えて恨み辛みすら忘れさせてよい気持ちになってもらう、美で圧倒するということをしていました。

主人公が少年時代に、父親、恐らくはヤクザの親分さんだったであろう父親を眼の前で殺され、仇討ちをしようとして失敗する、というエピソードがありました。その後、父親代わりとなった渡辺謙さんが演じる歌舞伎役者から、芸による仇討ちについて語られるシーンがありました。

恐らくは、前述の美による圧倒が、この、主人公なりの仇討ちだったんじゃないかなと思いました。実際、主人公が求めた景色(即ち美?)は、父親が死ぬ時の情景と類似するところがありましたし。主人公は芸により、父親の死(の情景、)の美しさ、価値を世の中に認めさせることで、仇討ちを果たしたのだと思いました。

そして、そのような美的存在が、国という真偽善悪を司る(?)存在に価値を認めさせた証が、国宝というものとして描かれているのではないかと思いました。

映像についても好い感じでした。空間というか空を映し出しているようで、心地良かったです。

公開からだいぶ経つのに満員でビックリしました。久し振りに映画館に行ったのですが、素晴らしい体験になりました。

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